路線バスの見分け方【超初心者向け】

鉄道ファンが、多く世間にも知られている存在であるのに比べるとバス趣味はマイナーかもしれません。そしてその要因の一つとして考えられるのは、初心者が見た時に感じる難解さがあるでしょう。そこで今回は少しバスに興味が出てきた方向けの基本的な車種の見分け方を紹介します。
(かくいう私も最初は趣味人が使う“暗号”の羅列に「KC-…??ゲテノン…?何それ」といった状態でしたのでご安心を…)

 当記事では、排ガス規制による差異、シャーシごとの差異、尺の長さ、扉配置・クーラー・席配置・ミラー・CNG,ハイブリッド云々…の仕様や細かい例外、その他各事業者による特別仕様・差異…といったものは基本的に省かせて頂きました。またその境界が曖昧ではありますが、記事中では現在日本国内を走る主要な国産車のみ取り扱い、特装車やマイクロバス系はほぼ紹介しない他、バスの呼び名について必ずしも正式名称でない場合があります。各車種には筆者の主観で簡単な説明を入れましたが、ぶっちゃけ説明はすっ飛ばしても構いません

 

当記事は個人サイト「奥ゆかし廃探索記」にて公開中の「路線バスの見分け方【初心者向け】」を制作者本人が再編集・一部改変の上制作したものです。
※出来る限り正確な情報を掲載するようにしていますが、まだまだ私自身が浅学であります故、まともな画像が用意できていなかったり、説明が足りない、間違っているという場合が多々見受けられると思います。その場合はコメント、Twitter、メールでも何でも構いませんのでご指導頂けるとありがたいです。また、各更新時は日時と内容を記事の最後に掲載しています。
※掲載スペースの都合上、省略表記を多用しています。ご了承ください。
※この車両一覧は、筆者個人の趣味による私見や諸説を個人(文責・撮影:三島慶幸)の見解で示した制作物です。ここに掲載している情報などについて各所へ問い合わせをするのはお控えください。
※車庫敷地内で撮影したすべての写真は撮影許可を頂いております。無許可での営業所・敷地内への立ち入りはお止め下さい。

バス車両に関するイントロダクション

 現在の日本のバスの構造は、シャーシ(エンジンや駆動系の足回り)と上のボディ(車体・普段乗る箱の部分)との二つに分かれています。すなわち、自動車会社の作ったシャーシに、車体メーカー(コーチビルダー)の作ったボディーを架装して1台のバスが完成するのです。日本で走っているバスの車体は主に

・川重車体工業→IKコーチ→いすゞバス製造→ジェイ・バス(J-BUS)
・日野車体工業→ジェイ・バス(J-BUS)
・三菱・呉羽自動車工業→新呉羽自動車工業→三菱自動車バス製造→三菱ふそうバス製造(MFBM)
・富士重工業
・西日本車体工業
・北村製作所(例外的なので今回は扱いません)
・東京特殊車体(例外的なので今回は扱いません)
・京成車体(例外的なので今回は扱いません)

といった会社が挙げられ、バスの足回り(シャーシメーカー)は主に

・いすゞ自動車
・日野自動車
・三菱ふそう(ふそう)
・日産ディーゼル(日デ・UDトラックス)

の4つの会社が挙げられます。基本的にはそれぞれの保有する指定の子会社が架装を行っていますが、日デなどは指定のコーチビルダーを持たず、車体製造専業の会社にシャーシを納入していました。

そしてバス趣味の導入を難解にしているのが以下の事例なのですが、実は日本各地の様々な事情からバスの各シャーシは必ず指定会社の車体を架装したわけではなく、例えば日野(シャーシ・足回り)×富士重工(車体)というような異種組み合わせがあったり、OEM供給という、他社の製品を受託し同じ車体のバスを別の会社が販売するというような例が多数あります。(業界再編が行われた現在ではそのような車両の例は減っています。)

今回は簡単な車両の紹介と見分け方ですので、見た目ですぐに判断できる車体のみに重点を置いて紹介していきます。

 

いすゞ系(IKコーチ/いすゞバス製造系列)

・いすゞ大型:キュービック

(岩手県交通 岩手200か・944 キュービック U-LV324L(1993年式))

このバスは、いすゞが1984(昭和59)年から2000(平成12)年に後述のエルガへフルモデルチェンジするまで生産していたバスです。立体的な前面と前面窓下部の曲線、左右の視野拡大用の三角固定窓が特徴的な車両です。年式の古さから現在では都心部ではあまり見かけなくなった車種の一つです。

・いすゞ中型:ジャーニー(K)

(茨城交通 水戸200か 11-86 ジャーニーK KC-LR333J(1998年式))

いすゞが製造していたバスの「ジャーニー」には様々な種類があり、こちらは「ジャーニーK」という名前で1984(昭和59)年から1999(平成11)年まで生産していた中型路線バスです。中型バスというのは大型バスよりも幅を狭く、長さを短く、タイヤを小さくと全体的に一回り小さく作られているバスのことで、このジャーニーKは大型車のキュービックに対応した同世代の中型車…という感覚で良いかもしれません。ちなみにキュービックよりも一年早く生産終了しており、現在いすゞの中型バスは後述のエルガミオへフルモデルチェンジしています。

日野系(日野車体工業系列)

・日野大型:ブルーリボン

(岩手県北バス 岩手200か 16-17 ブルーリボン KC-HU2MLCA(2000年式))

日野の大型バス「ブルーリボン」の歴史は長く、1953(昭和28)年にBD系と呼ばれるタイプのバスに日野自動車がブルーリボンと名付けたものが由来です。現在走っている「ブルーリボン」は1982(昭和57)年に、観光バスRS系で初めて採用されたスケルトンボディを路線バスにも採用した際に命名された車両です。以降2000(平成12)年にブルーリボンシティにマイナーチェンジされるまでこの姿で製造されました。スケルトンボディを意識した直線的ですっきりとした見た目のデザインが特徴です。


(関東自動車 宇都宮230あ・774 ブルーリボン U-HT2MLAA(1994年式))

ちなみに1995(平成6)年規制(いわゆる「KC代」)より前の年式の車両は基本丸目のライトを装備しているので、これは都心部ではまず見かけることのない古参車両と言えます。(※この時代は角目ライトが事業者オプションでした。)

・日野大型:ブルーリボンシティ

(ちばフラワーバス 6438号車 千葉200か・996 BRC KL-HU2PMEA(2003年式))

こちらは前述のブルーリボンが2000(平成12)年にマイナーチェンジする形で登場した「ブルーリボンシティ」と呼ばれるバスで、省略してブルシチやBRCと呼ばれているバスです。未だに古さを感じさせないフロント周りのデザインが特徴的な車両ですが、2004(平成16)~2005(平成17)年にかけて、ジェイ・バス標準モデルのいすゞエルガと同じ車体のブルーリボンⅡに製造が移行してしまいました。


(千葉海浜交通 306号車 千葉200か 17-98 BRCハイブリッド ACG-HU8JMFP(2005年式))

その後ブルーリボンシティはしばらくハイブリッドノンステップ車専用のモデルとして製造されていましたが、そちらも2015(平成25)年でジェイ・バスモデルの車両(後述)に移行し、製造を終えています。ハイブリッド車は車体の上にある大きな“こぶ”が特徴的です。

~おまけ・変則車小噺①~
元来路線バス車の多くはツーステップで車内がフルフラットというスタイルでしたが、バリアフリー化が叫ばれ始めた1990年代からワンステップバスが続々と登場、1997(平成9)年にはブルーリボンにフルノンステップ車が追加されました。


(つばめ交通 八戸200か・897 BRC KL-HU2PPEE (2003年式))

ブルーリボンシティにも同仕様のノンステップ車が登場しています。エンジンを後部に垂直横置きすることでノンステップエリアを実現させたこの形態は他の各社の車体でも見られましたが、車内定員の減少や追突事故時の危険性など、課題も多くありました。

 

・日野中型:レインボー(RJ/RR)

(秋田中央交通 秋田200か・143 レインボーRJ KK-RJ1JJHK改(2001年式))

日野レインボーは、1980(昭和55)年に国内初のスケルトン構造を取り入れた中型バスとして製造され、2004(平成16)年にレインボーⅡに置き換えられるまでの間生産されたバスです。ブルーリボンとよく似た設計に、視野拡大を目的とした前面ガラスの段差が印象的です。

(宮崎交通 宮崎22か・915 レインボーRR P-RR172CA(1990年式))

こちらもブルーリボン同様、古い車両は丸目のライトが標準装備仕様とされています。また装着はまちまちですが、「Rainbow」と車種のロゴが入ることもあります。

(茨城交通 水戸22あ 11-02 レインボーRJ P-RJ172BA(1987年式))

また更に古いタイプの車両(RJ/RR 170/172Bまでの車両)はライトが1灯式になっています。こちらは商品名を「レインボーシティ」と呼んでいたようですが、浸透はせず俗に「1つ目RJ」と呼ばれています。現在では極古車であり、滅多に見ることが出来ない希少車種です。

・日野中型:レインボーHR


(ちばグリーンバス CG-761号車 千葉200か 31-90 レインボーHR KL-HR1JNEE(2003年式))

日野レインボーのノンステップ車は「レインボーHR」という名称で製造されました(※)。ライト周りの形状がレインボーからリメイクされたこの車両の特徴は、車幅は中型のまま長さだけ大型と同等の仕様である「中型ロング」のタイプが存在することです。こちらは「HR1」系から「HR7」系への1度のマイナーチェンジを経て、比較的最近の2010(平成22)年まで製造されました。
※先述のレインボー(RR/RJ系)の製造が終了した後のマイナーチェンジ車からは同じレインボー同士の区別の必要がなくなったのでブランド名からはHRの呼称が取れていますが、一般的には便宜上HRの呼称をそのまま使用します。

(熊本都市バス 熊本200か 11-55 エルガJ PK-HR7JPAC(2004年式))

また中型ロングに分類される10.5m車はいすゞにOEM供給されており、「エルガJ」の名称でごく少数が販売されました。外観での判断はなかなか難しいでしょうが、なかなか台数は存在しませんのであまり気にする必要は無いでしょう。

 

・日野小型:ポンチョ


(京成バス 4400号車 習志野200か 19-14 ポンチョ SDG-HX9JLCE(2016年式))

日野ポンチョ(実は2代目)は、「ポンと乗ってチョこっと行く」をコンセプトに、リエッセに代わる現行唯一の小型車として2006(平成18)年よりジェイ・バス系列で生産されています。丸型の多い部品は前照灯がダイハツの軽自動車ムーヴの流用、リヤランプが2代目セレガと共通品にするなどの低コストを重視した結果で、現在では各自治体のコミュニティバスなど狭い道や少人数輸送に大量導入されています。

・日野小型:リエッセ

(関東自動車 宇都宮200あ・198 リエッセ KK-RX4JFEA(2002年式))

日野リエッセは、1995(平成7)年から2011(平成23)年までの間に製造された全長7mクラスの小型バスです。ツーステップのバスではありますが、リフトを装備するなどバリアフリーにも対応している上、小型のバスでは唯一のリアエンジン車で有効空間が広いためコミュニティバスなどの小型路線バスとして各地に広まりました。また小型車の中でも特に小回りの効く設計が強みであり、現在でも狭隘路線などでは重宝されています。またトヨタ自動車へは「コースターR」 、いすゞには「ジャーニーJ」としてOEM供給がなされています。

ジェイ・バス系(いすゞ日野(・トヨタ))

・いすゞ大型:エルガ/日野大型:ブルーリボンⅡ


(下津井電鉄 I344号車 岡山230あ・344 エルガ KL-LV280L1改(2003年式))
いすゞエルガは、平成11年排出ガス長期規制に合わせてキュービックからフルモデルチェンジし2000(平成12)年に登場した大型バスです。前年から製造されている中型バスのエルガミオとのデザイン・部品共通化、更に翌年には「ERGA-VP」という標準仕様を設定し、車両の仕様別のラインナップを減らす代わりに低コスト化を実現させました。いすゞと日野のバス事業統合が行われると、2004(平成16)年からはOEM供給、翌2005(平成17)年からは統合車種という形で同じこのエルガタイプのバスを両社が製造しています。

~おまけ・変則車小噺②~


(成田空港交通 519号車 成田200か 11-03 エルガ KL-LV834N1(2004年式))

エルガのノンステップ車の初期車にも、変則車小噺①で取り上げたフルノンステップのブルーリボンのように床面に対し最後部にエンジンを垂直横置きすることで、床面をフルフラットタイプとしたノンステップ車両が存在しました。エルガのフルフラットノンステップ車は通常のノンステップ車と並行して製造され、通常のノンステップ車が「type-A」、こちらのフルフラット車が「type-B」と称されていました。型番の「834」よりごく一部の趣味人からは“馬刺し”などとも呼ばれているこのtype-Bのエルガは2005年夏に製造を終了しており、日本全国に数多いるエルガの中では希少なタイプになります。


(京成バス 4516号車 習志野200か 15-76 ブルーリボンⅡ PJ-KV234N1(2007年式))

全く同じ見た目のこちらは、日野自動車製の「ブルーリボンⅡ」です。いすゞエルガとの統合車種として2015(平成27)年まで生産されていました。同時期のエルガと見た目が全くの瓜二つ状態なので、基本的には会社のロゴもしくは事業者についての事前の知識で判断する必要があります。


(西東京バス C21020号車 八王子200か 13-81 ブルーリボンⅡ PKG-KV234L2(2009年式))

2007(平成19)年以降の日野ブルーリボンⅡはライトが左右1灯ずつになっているため、容易に区別が付けられます。2灯と比べると若干優しい顔つきに見えます。

・いすゞ大型:エルガ/日野大型:ブルーリボン(「290」)


(京成バス 0541号車 習志野200か 18-85 ブルーリボン  QDG-KV290N1(2016年式))

2015年からマイナーチェンジが行われ、現行モデルはこの顔となっています。再びエルガとブルーリボンが全く同じ顔つきとなってしまい、見た目での判別がつかなくなりました。またブルーリボンの方は今回のマイナーチェンジ時に名称から「Ⅱ」が取れました。


(京成バス 4544号車 習志野230あ 45-44 ブルーリボンハイブリッド 2SG-HL2ASBP(2018年式))

ハイブリッド車もエルガとブルーリボンが全く同じデザインで統合されました。ハイブリッドのロゴと屋根上の筐体がハイブリッド車の証です。ちなみに少々突っ込んだ話になってしまいますが、ハイブリッド車はディーゼル車に比べて全般的に車長が長めになっているという特徴もあります。

・いすゞ中型:エルガミオ/日野中型:レインボーⅡ


(岩手県北バス南部支社 八戸200か・807 エルガミオ SKG-LR290J1(2015年式))

いすゞの中型バス・エルガミオは1999(平成11)年に発売されました。今では一般的なアイドリングストップ装置を中型車で初めて採用しています。


(茨城交通 水戸200か 11-01 レインボーⅡ PDG-KR234J2(2010年式))

大型車のエルガ/ブルーリボンと同じく、2007(平成19)年以降の日野レインボーⅡもライトが左右1灯ずつになっているため、容易に区別が付けられます。

・いすゞ中型:エルガミオ/日野中型:レインボー(「290」)

(鞆鉄道 Z-9-507号車 福山230い・507 エルガミオ 2KG-LR290J3(2019年式))

エルガ/ブルーリボンから少し遅れた2016年から中型車のこちらもマイナーチェンジが行われて現行モデルはこの顔となっており、再び見た目での判別がつかなくなりました。またレインボーの方は名称から「Ⅱ」が取れています。

・トヨタ大型(燃料電池バス):SORA

(JRバス関東 L530-20501 江東210あ 20-27 SORA ZBC-MUM1NAE(2020年式))

ジェイ・バスが製造し、トヨタ自動車が販売している「SORA」は、水素電池を利用した蓄電池駆動のバスです。一般的な路線バスとはまだ一線を画した「イロモノ」枠ではありますが、燃料電池車のバスとしては国内で初めて国交省の型式認証を取得し、全国の事業者に導入が進んでいるため、本記事に登場してもらいました。

三菱ふそう系(名自/呉羽→新呉羽(MBM)(MFBM)系)

・ふそう大型:エアロスターM・エアロスターK

(鹿児島交通 鹿児島22き・253 エアロスターM  P-MP618MT改(1990年式))

三菱ふそうの大型車は「エアロスター」と呼ばれています。三菱名自製のこのエアロスターMは1984(昭和59)年から製造され、1996(平成8)年に後述のニューエアロスターにモデルチェンジされるまで製造されました。
※後述のエアロスターKの生産終了後に、車体製造は呉羽系の三菱自動車バス製造(MBM)に移管しています。


(しずてつジャストライン 静岡22き 27-75 エアロスターK U-MP218K(1992年式))

そしてエアロスターMと瓜二つのこちらは「エアロスターK」と呼ばれているバスです。呉羽自動車工業というコーチビルダー製の車体でエアロスターMと併売されていましたが、1993(平成5)年にエアロスターMに統一され、一足前に生産を終了しています。しかし現在の三菱ふそうバス製造(MFBM)は呉羽自動車工業の系統を受け継いでおり、現在のニューエアロスターの直系の先祖と言える存在です。

・ふそう大型:(ニュー)エアロスター

(しずてつジャストライン 静岡200か・312 エアロスター KL-MP35JM(2004年式))

現在最も見られるエアロスターはこの「ニューエアロスター」です。発売当初は区別するためにニューの呼称が用いられましたが、現在では普通にエアロスターと呼ばれています。エアロスターMより直線的なエアロスターKの雰囲気を継承したスタイルで、1996(平成8)年から製造されています。
(関東バス C1264号車 練馬200か 24-36 スペースランナーA LKG-AP37FK(2010年式))

このエアロスターは2007(平成19)年から2011(平成23)年までの4年間、「スペースランナーA」という名前で日産ディーゼルへのOEM供給がされていましたが、車内ハンドルのロゴ以外に判断する要素はほとんどありません。


(両備バス 1918号車 岡山200か 17-20 エアロスター 2PG-MP35FP(2019年式))

現在の最新型エアロスターは2014(平成26)年からノンステップ車のモデルチェンジ(MP37系→MP38系)にあわせて、フロントのバンパー周りがリニューアルされています。ちなみにノンステップ車は設計の多くが変更されたため型式が変わっていますが、ワンステップ車ではバンパ周りや冷房筐体などの小改良にとどまった結果、MP35系をそのまま名乗っています。また2020(令和2)年現在、いすゞエルガ/日野ブルーリボンにはワンステップ車が設定されていないため、このエアロスターが路線バスで唯一ワンステップ車を製造しています。

・ふそう中型:エアロミディ(・エアロノーステップミディ)

(東洋バス 習志野230あ・・70 エアロミディ PA-MK25FJ(2006年式))

ふそうの中型車であるエアロミディは、1988(昭和63)年から製造されています。写真のタイプの現在一般的によく見られる見た目の車体は1993(平成5)年よりマイナーチェンジしつつ製造されていました。基本的には中型車ですが、こちらも前述のレインボーHR同様10.5m仕様の中型ロング仕様も製造されており、そのルックスから趣味人には「ダックスフント」とも呼ばれる場合もあります。また2017(平成25)年からは公式に製造が中止されており、また後継モデルの車両が登場していない事から、今後の動向が注目されます。
※「エアロノーステップミディ」はノンステップバスの一部車両(KK-MJ26HF改)にのみ呼称されていました。

(福島交通 福島22か 21-03 エアロミディ U-MK517J(1991年式))

なかなか見かけることが出来ない貴重な初期車であるこのタイプのエアロミディは新呉羽ボディタイプで製造されており、エアロスターKに近い見た目が特徴的です。

富士重工

富士重工は、バスの車体部分のみを製造する「コーチビルダー」という方式の会社で、おおむね全ての会社のバスシャーシに架装することが可能であり、下回りのシャーシのみ製造していた日産ディーゼルの標準架装会社としてバス製造を行っていたほか、複数の会社の車両を導入しつつも車体の統一化を図りたいバス会社などに重宝され製造されていましたが、シャーシメーカーそのもののコーチビルダー系列化によって次第に生産台数が伸び悩み、2003(平成14)年度をもってバス車体の製造を終了しました。したがってバスの平均寿命が15~20年といわれている現在では次第に姿を消しつつある車体です。

・富士重工大型:17型E(7E)

(下津井電鉄 N326号車 岡山22か 35-73 日デ U-UA440NAN(1993年式))

富士重工の7Eと呼ばれる大型バスは、1988(昭和63)年から2000(平成12)年にかけて製造されました。指定シャーシの日デシャーシを導入した事業者を基本に、また東日本の事業者を中心に導入されました。

日デの他には、いすゞのキュービックボディを避けた(といわれる)事業者がいたことからいすゞ車がその次に多く架装された他、少数派でありますが写真のような日野シャーシや、ふそうシャーシにも…と4シャーシメーカー全てに架装されています。また千葉の幕張新都心用のボルボ社製の連節バス(初代)にも架装実績があります。

 

・富士重工大型:17型E(新7E)

(中鉄バス 0203号車 岡山200か 14-56 日デ KL-UA452KAN改(2002年式))

7Eは2000(平成12)年から、車体の軽量化などを目的としたマイナーチェンジが実施され、「新7E」と呼ばれるタイプになり、以降富士重工のバス車体撤退の2003(平成15)年まで製造されました。新7Eからはノンステップ車も登場し、中には安全確認窓が大きく開けられ印象が全く異なる見た目の車両も存在します。基本的には日産ディーゼル車にのみ架装されましたが、ノンステップ車を中心に一部ではいすゞ車にも架装されています。
上:富士重新7E×いすゞ×下:富士重7E×日デ

上:(サンデン交通 下関230あ 52-06 いすゞ KL-LV280L1改)
下:(トモテツバス N5-171号車 福山22く 13-22 日デ U-UA440HAN(1995年式))

これまでの7Eと、外観上で最も目に付く差はフォグランプ位置の変更です。上が新7Eで下が7Eです。

・富士重工大型:15型E(5E)

(下津井電鉄 N529号車 岡22か 23-00 日デ P-UA32L(1985年式))

これは富士重工の一世代前の大型バスで、5E(正式には「15型E」)と呼ばれるバスです。1982(昭和57)年~1988(昭和63年)に製造され、こちらも4シャーシメーカー全てに架装されています。最後期の車両でも30年以上前という極めて古いモデルのため、ほとんど見ることができません。(私も乗った事はありますが、動いている姿を写真に収められていません…)

・富士重工中型:18型E(8E)


(茨城交通 水戸200か 10-82 日デ KC-RM211GSN(1998年式))

8Eは7Eの中小型タイプの狭幅車両で、日産ディーゼルといすゞ車の2シャーシに1990(平成2)年~2003(平成15)年の間架装されました。最初期車ではフォグランプの位置が下部にあるなどといった差異がありましたが、その後は大型の7Eをそのままダウンサイジングしたようなデザインとなり、7Eが新7Eに変更した際も細かな部分での形状変更のみで終えており、基本的なデザインは製造終了まで継続されました。

・富士重工中型:16型E(6E)

(関東自動車 栃木22う・・・6 日デ P-RM81G(1988年式))

6Eは、5Eの中小型タイプの狭幅車両で1982(昭和57)年~1990(平成2)年の間製造されました。5Eよりも次世代への移行が2年遅かったため、5Eよりは「まだ」見かける機会があります。(細かく表現すると、いすゞLRへの架装のみU-の途中まで行われました。)

西日本車体工業(西工・NSK)系

 西日本車体工業(通称:西工)は、日本最大のバス事業者である西日本鉄道(にしてつバス)の子会社で、バスの車体部分のみを製造していたコーチビルダーです。こちらも富士重工と同じくおおむね全てのシャーシに架装することが可能で、当初は西日本を中心に導入されていたローカルな車体製造会社でしたが、2002(平成14)年に日産ディーゼルがバスの架装を西日本車体工業に集約し、元来の架装先であった富士重工がバス車体架装事業から撤退して以降、日産ディーゼルの標準架装会社として全国に展開されるようになり、各地のバス会社に導入されました。

 こちらもシャーシメーカーのコーチビルダー系列化の影響を受けつつも、各シャーシの並行導入各事業者への細かいオプション対応などを武器に生産を継続していましたが、標準架装先であった日産ディーゼルが三菱ふそうとの合併を模索し西工車体の採用を中止したため、2010年(平成22年)をもってバス車体の製造を終了しました。(ちなみに2年後に日産ディーゼルは国内バスシャーシの製造そのものを中止しています。)

・西工B型:96MC(B-Ⅰ/B-Ⅱ)・07MC(中型車のみ)

(鞆鉄道 N5-186号車 福山230あ・186 日デ KL-UA452KAN(2005年式))

これは西工製の「96MC B-Ⅰタイプ」です。「96」の文字通り1996(平成8)年から西工解散の2010(平成22)年まで製造されました。日産ディーゼルを中心に4シャーシに架装され、その中でも日デのノンステップ車は一時期ふそうへOEM供給され「エアロスター-S」の名称で製造・販売されていました。

上:西工96MC(B-Ⅱ)×日デ×下:西工96MC(B₋Ⅰ)×日デ
上:(西鉄バス 5824号車 久留米200か 10-44 日デ KL-UA452MAN(2003年式))

下:(大阪市営バス 78-1156号車 なにわ200か 11-56 日デ PDG-RA273KAN(2008年式))

前面窓下端が直線処理なのがB-Ⅰ、片方が下がっているのが B-Ⅱです。これはオプション選択で、採用は事業者や年式によってまちまちです。また96MCは2005(平成17)年の秋から灯火規制によってボディスタイルが変更され、正面だとフォグランプ回りが若干変更(通称05NS)されました。(同じ画像をご覧ください。)


(熊本バス 熊本200か 15-65 日デ KK-RM252GAN改(2002年式? ))

西工では中型バスと基本同じデザインで架装が施されますが、中型車は前面窓下端が直線処理のB-Ⅰ型のみが存在します。中型車も大型車同様、日デシャーシを中心に4シャーシに架装されました。


(熊本バス 熊本200か 11-89 日デ KL-JP252NAN改(2000年式))

西工中型車にも10.5m(中型ロング)車が存在します。流れ的に紹介が前後していますが、そもそも中型ロング車を初めて開発したのは西工(及び日デ)で、1992年に西鉄北九州線の砂津~黒崎駅前間のバス転換時に、低床車かつ廉価な車両として開発された車両(JM系改)がその元祖です。その後正式に開発、認定されたJP系が全国に波及しており、スぺランJP、JPと略されています。上の中型車と同塗装の写真を選んだため、その長さが良く分かると思います。


(千葉シーサイドバス 千葉200か 26-44 ふそう PDG-AR820GAN(2008年式))

また、中型車のみ2007年途中より「07MC」という新ボディスタイルに変更されています(※)。このボディが西工路線バス車体の最終形態となりました。三菱車の影響を大きく受けた形態を持ち、三菱ふそうへのOEM供給車であるエアロミディ-Sなどはこの07MCボディに該当します。
(※:2005年の灯火規制(05NS)とは別物です。)

 

・西工B型:58MC(B-Ⅰ/B-Ⅱ)

(関東自動車 宇都宮200か・693  いすゞ U-LV224K(1993年式))

96MCの一世代前、「58MC」と呼ばれているタイプの車体です。1983(昭和58)年から96MCにチェンジする1996(平成8)年まで製造されていました。富士重工が健在であった時の車体であるため、東日本で新車導入した会社はほとんどありません。写真の車両は元・大阪市交通局となります。


(岡電バス 951号車 岡山22か 38-08 ふそう U-MP618M(1995年式))

三菱ふそうのシャーシを架装した58MCです。こちらは前面窓の視野拡大仕様(B-Ⅱ)で、前面ガラスが一段下がるスタイルは日野・レインボーの影響を受けたといわれています。

左:(九州産交 熊本200か 10-85 ブルーリボン KC-HU2MLCA(2000年式))

右:(九州産交 熊本22か 30-79 いすゞ KC-LV280N(1996年式))

B-Ⅰタイプになるとさらにですが、58MCは見た目が日野車体のブルーリボンと非常に似ています。ライトやバンパーの「ゴツさ」や、角ばった処理のブルーリボンに比べて丸みの付いている前面の角処理などで判別できると思います。また、西工のバスのナンバー貼付位置は導入事業者によってバラバラであることが比較的多いのも特徴です。ちなみに、58MCには丸目ランプと角目ランプの車両が存在しますが、どちらかというとこちらは年式差ではなくシャーシ・事業者によっての差が大きいこともあり、日野・ブルーリボン/レインボーのように必ずしも丸目=年式が古いとは断定しきれません。
(個人的にはブルリの方が華奢な印象を受けます。)


(亀の井バス 大分22か 20-52 日野 KC-RJ1JJCA(1996年式))

こちらは58MCの中型車。58MCでも大型と中型はおおむね同じデザインで架装が施され、中型車はB-Ⅰ型のみの存在です。

・西工:西工SR(日デオリジナルボディ)

(茨城交通 水戸200か 14-06 日デ KK-RM252GAN改(2002年式))

この車両は日産ディーゼルと西工の共同開発により生まれた独自型の中型バス「西工SR」で、趣味人からは「日デオリジナルスタイル」「チャボ」といった呼び方がなされています。大型の1枚窓が特徴のこの車体はB型路線車の58MCをベースに1988(昭和63)年から2003(平成15)年まで製造されていました。

 以上が日本で主に活躍する路線バスのざっくりとした分類になります。「初心者向け」と銘打ったこの記事でしたが、噛み砕いて書くというのはふつうに書くよりも難しいもので、私自身の知識の偏りや嗜好によって解説の内容が薄すぎたり、はたまた初心者向けなのか…?と思わせてしまうようなほど書きすぎたりとまちまちな内容になってしまったなと今更ながら反省しております。

 それでもこの記事が少しでもバス趣味へのきっかけ、車種研究スタートの一助になれれば幸いです。ぜひ素敵なバスライフを。